Mouse Dictionary 代替のSRS統合ホバー辞書拡張

Mouse Dictionary の代替候補は、3 系統に分かれます。同じホバー辞書型の Weblioポップアップ英和辞典、文単位で訳す DeepL などの翻訳拡張、そして lookup に SRS(間隔反復)を統合した Chrome 拡張の immit です。
選び方の軸は 2 つ。Mouse Dictionary と同じホバー辞書の速さを保てるか、引いた単語を SRS の復習に回せるか。語彙数だけの不満なら同型のホバー辞書で足り、記憶まで含めるなら SRS 統合型が代替の本命になります。
Mouse Dictionary は速さに特化したホバー辞書で、SRS を持ちません。この線引きが代替選びの出発点です。
本記事では、米国企業で Mouse Dictionary を 3 ヶ月使った私が、拡張機能 3 つを比較表で整理します。翻訳拡張との違いや、代替が不要な人も明記しました。
執筆は 2026 年 8 月時点の情報です。
Mouse Dictionary の強みと、ホバー辞書の代替を探す 3 つの理由
前提として、Mouse Dictionary は完成度の高い英和ホバー辞書プラグインです。マウスオーバーで約 0.1 秒の高速 lookup、無料のオープンソース、Chrome / Firefox 対応で、拡張アイコンからオン / オフの切り替えも一瞬です。専用の PDF viewer を開けば、PDF 内の英文も引けます(GitHub で公開されています)。
それでも代替を探す人の理由は、おおむね次の 3 つに集約されます。
- 引いた単語が覚えられない。 lookup が高速なぶん、脳が「いつでも引けるから覚えなくていい」と処理してしまい、同じ単語を翌週また引くことになります。
- ページにない単語を能動的に調べる窓がない。 いま読んでいる web ページの外の単語は、結局別タブの辞書サイト行きになります。
- 標準辞書 ejdict-hand(約 12 万語)では英語の専門用語に弱い。** カスタム辞書で補えますが、辞書ファイルの入手と設定に手間がかかります。
Mouse Dictionary そのものの使い方やカスタム辞書の設定は、Mouse Dictionaryの使い方・設定・カスタム辞書で詳しく扱いました。本記事はその先、つまり代替ツールの選び方に絞ります。
代替候補 1: Weblioポップアップ英和辞典。語彙数で選ぶホバー辞書型の拡張機能
Weblioポップアップ英和辞典は、辞書サイト Weblio が提供する Chrome 拡張機能です。web ページ上の英単語を選択すると、ポップアップで訳語が表示されます。Mouse Dictionary と同じ「ページを離れず引く」ホバー(マウスオーバー)辞書型のツールです。
強みは Weblio 本体の語彙数です。専門用語や新語のカバー範囲は ejdict-hand より広く、訳語から Weblio のサイトに飛べば例文や類語も確認できます。辞書ファイルの設定なしで語彙を補強できるのは、専門分野の英文を読む人には利点です。
一方で、設計はオンライン前提で、オフラインでは使えません。語彙数が乗り換えの理由なら、Weblioポップアップ英和辞典が最有力です。また Mouse Dictionary と同じく SRS のような復習機能は持たないため、1 つ目の理由「引けるが覚えられない」は、この乗り換えでは解消されません。
代替候補 2: 翻訳拡張(DeepL・Google 翻訳)は文単位。語彙学習とは役割が別
「英文を読むのがつらいから代替を探している」場合、DeepL や Google 翻訳の拡張機能も候補に挙がります。選択した文をまとめて日本語にできるので、文意の把握だけが目的ならこちらが速い場面もあります。
ただし翻訳拡張は文単位のツールで、単語単位の学習には向いていません。訳文を読んだ瞬間に英語の原文から意識が離れるため、多読で語彙を増やしたい人の workflow とは役割が別です。
私が実践していた使い分けは「普段はホバー辞書、構文が取れない文だけ翻訳」という使い分けが現実的です。翻訳拡張は Mouse Dictionary の代替ではなく、併走する別カテゴリのツールと考えると整理しやすくなります。
代替候補 3: SRS 統合型の immit。引いた単語を 8 段階で自動復習
SRS(間隔反復)とは。忘れる直前に復習を入れる仕組み
SRS(Spaced Repetition System、間隔反復システム)は、復習の間隔を記憶の定着度に合わせて少しずつ延ばしていく仕組みです。Anki が採用していることで広く知られています。
英語学習での効果は実証されており、「引いた単語が覚えられない」という 1 つ目の理由への構造的な答えがこれです。問題は、Mouse Dictionary から Anki への転記が手作業になることでした。
immit はホバー辞書の lookup・ワンクリック保存・SRS 復習が 1 つで完結
immit は、Mouse Dictionary と同じく約 約 0.1 秒の hover lookup ができる英和辞書で、Chrome 拡張とデスクトップアプリ(Mac / Windows / Linux)で提供されています。起動キーを Ctrl / Opt / Shift / Cmd から選び、キーを押しながらホバーした単語だけ辞書が出る設計です。
Mouse Dictionary との違いは、引いたあとの動線です。ポップアップ内のブックマークアイコンをクリックすると単語が単語帳に保存され、組み込みの 8 段階 SRS が復習タイミングを自動で管理します。Anki への手入力転記は不要になります。
画面右下に常駐する Pocket Dictionary(ポケット辞書)も組み込まれています。タブを切り替えずに能動的な単語検索ができるので、2 つ目の理由「ページにない単語を調べる窓がない」もここで解消されます。
無料プランはアカウント不要で、辞書 lookup・保存・SRS 復習はオフラインでも使えます。
正直に書くと、immit には Firefox 版がなく、PDF 内の lookup にも対応していません。カスタム辞書ファイルのインポート機能もありません。この 3 点が気になる人は、比較表の後の PDF / Firefox のセクションで判断材料を補ってください。
Mouse Dictionary・Weblio 拡張・immit を 5 軸で並べる
翻訳拡張は役割が別カテゴリのため、ホバー辞書型の 3 ツールを比較します。
| 軸 | Mouse Dictionary | Weblioポップアップ英和辞典 | immit |
|---|---|---|---|
| 価格 | 無料(オープンソース) | 無料 | 無料 tier + Pro(月 9 ドル / 年 108 ドル) |
| 提供形態 | Chrome / Firefox 拡張 | Chrome 拡張 | Chrome 拡張 + デスクトップアプリ(Mac / Windows / Linux) |
| lookup 方式 | マウスオーバー / ダブルクリック | 単語を選択 | 起動キー + ホバー |
| SRS 復習 | なし | なし | 組み込みの 8 段階 SRS |
| オフライン | 辞書データを local 保持 | オンライン前提 | lookup・復習とも対応 |
PDF と Firefox で読む人は、Mouse Dictionary 継続が答え。優先順位が「速度・PDF・Firefox」に寄るなら Mouse Dictionary 継続、「語彙数の補強」なら Weblio 拡張、「復習までの一体化」なら immit、という整理になります。
Chrome 拡張 immit を 5 分で試す手順。Mouse Dictionary と併用して比較する
代替を immit に決め打ちする必要はありません。Mouse Dictionary を残したまま試して、合わなければ戻る前提で始めるのが安全です。
- Chrome ウェブストアから immit を追加します。無料プランはアカウント登録不要です。
- あわせてデスクトップアプリ(Mac / Windows / Linux)もインストールします。ブラウザ外でも復習できるようになります。
- ホバー lookup の起動キーを Ctrl / Opt / Shift / Cmd から 1 つ選びます。Mouse Dictionary と誤爆しないキーにするのがコツです。
- 1 週間は両方を併用し、普段読むサイト(Qiita、Zenn、英語ニュースなど)で操作感を比較します。
- 引いた単語を保存していき、デッキに復習が溜まり始めたら、覚える workflow が機能している合図です。
この 5 step を 1 週間実践すると、自分に必要なのが速度だけか、SRS の復習までかを判断できます。ショートカットの違いやカスタム辞書の扱いなど、乗り換えの実務的な注意点は Mouse Dictionary から immit に乗り換えるときに知っておきたい 7 つのことにまとめてあります。
私が Mouse Dictionary から離れた理由と、離れなくていい人(Firefox / PDF 重視派)
最後に、私自身の話です。米国企業で働いていた頃、英文の社内ドキュメントや GitHub のコメントを Mouse Dictionary で 3 ヶ月読み続けました。リーディングの速度は明らかに上がりました。
離れる決め手になったのは、当時の単語メモです。同じ週にある単語を 3 回引いた記録が残っていて、「引く」と「覚える」が自分の中で完全に切れていると気づきました。lookup の速さ自体が、覚えない言い訳になっていました。
一方で、Mouse Dictionary のままでいい人もはっきりしています。Firefox を主軸にしている人、専用 viewer で PDF を読む機会が多い人、自作のカスタム辞書を運用している人、そしてリーディングの速度だけが目的で復習を必要としていない人です。
この 4 つに当てはまらず、「引いた単語をそろそろ資産にしたい」と感じているなら、代替先は SRS 統合型に絞られます。私の場合はそれが、夫と immit を作る理由になりました。
まとめ: ホバー辞書と SRS、目的別の選び方
語彙数の補強なら Weblioポップアップ英和辞典、文意の把握なら翻訳拡張、引いた単語を SRS で記憶に残したいなら immit。Mouse Dictionary の速さに不満がないなら、無理に代替を探す理由はありません。
自分の不満がどれに当たるかを 1 つ選んでから動くと、代替探しは 5 分で終わります。immit を試す場合は、Chrome ウェブストアから無料で始められます。